イトウナツキ


駆け出しのイラストレーター、イトウナツキさんに会うために大阪へ足を運んだ。中崎町のとあるカフェでリアルな21歳の話を聞かせてもらった。



イラストレーターになるまで


小さい頃から絵を描くことが好きだった。というのは本当だが、それよりもいつもそばにあった落書き帳を切ってまとめて、オリジナルのノートを作ることの方が好きだった。その手作りノートのタイトルは「ナツキの好きな音楽100選」。当時、曲を100曲も知らないのに、そんな自分だけのノートを作って遊んだ。紙を触るのが好きな女の子だった。

10代後半になっても紙が好きなのは相変わらず。その影響もあり、高校卒業後には雑誌の編集や、広告のデザインをしたいという思いとともにグラフィックデザインの専門学校に通った。好きなこと、つまり絵を描くことはは学校という場所で書かされなくても、好きだから描くだろうと、あえて選択しなかった。


卒業からしばらくして、「絵を描く仕事をしたい」と言い続けていたにも関わらず、それに見合うだけの数をこなしていないことに気付く。だったらまずはいっぱい描いて発信しようと、毎日SNSにイラストをアップした。少しずつ見る人の数も増えていく。1つの絵を描いてSNS上にアップするまでには、およそ1時間かかるそう。

それからというもの、同じイラストレーターを生業としている方からグループ展の誘いが来たり、SNSでイラストを見て仕事を少しずつもらえるようになってきたという。



印刷物の収集癖


写真をピッックアップする作業がどうも好きらしい。iphoneにはおしゃれな画像がたくさん詰まっていた。それから印刷物を趣味で集めている。写真集、ZINE、フライヤー、etc。部屋はこういった印刷物で溢れているそう。紙に印刷されたものは実際に手にとって、目で見て、感じることができる。作った人の持っている感覚をリアルに受け取れる。雑誌で言うと、例えばNYLON。ファッション誌なのにファッション誌ではない感じ。スタイルブックのような、服を強調しすぎていない感じ。また、広告が少ないのもあり、商業感をあまり感じないところ。毎月、プロが時間に追われながらも一生懸命作り上げた、この素晴らしいクオリティのものを、全国の人がこの価格で手に取れるということにひどく感動するという。そしてネットでは味わえないめくる、触る、持つ、という実際の感覚。それが印刷物、紙ものの魅力のひとつだと、興奮気味に楽しそうに話してくれた。



いいと思うイラストとそうでないものの違い


イラストに何の機能もないと、自分が何を見せるために書いたのか分からなくなる。そういう意味では、お金を頂いて描くイラストにはきちんと細部まで考えて描くため、自分の中で納得した上で提供しているという。見ている側からすると全てが1作品として立派に出来上がったような風に見えるが、生み出す側としてはそれで何を外に発信できるのか、イラストに何を込められるのか。



個展を開いたきっかけ


絵が上手くなってから、画材を良いものを揃えてから、なんて考えていたらいつまでたっても何もできない。自分に満足いくことはきっとないのだから、下手でもいきなりでも行動に移した方がいい。実際、彼女は自分は絵が上手いと思って書いているつもりはないという。美大生でもなければデッサンを学んできたわけではない。それでも単純に上手い下手で分かれる舞台ではないし、自分が描く絵を大切にしたい。

現在21歳。周りからはまだ若いと言ってもらえる年でも、自分の中は焦りでいっぱいだ。じっとしていられず個展を開いた。楽しかった分、エネルギーをものすごく使ったようだが、その分の収穫があった。



絵を描くことを仕事にするということ


絵を描くことは楽しいか?と聞くと、楽しい楽しくないで考えないようにしている、と答えた。描くことに対して自分のモチベーションに左右されて、描きたくなったら描こうと今まで通りのスタンスでいると、描こうとするまでにエネルギーを使ってしまって自分がしんどくなってしまう。描いていればいずれ楽しくなってくるのはわかっているから、まずはとにかく描く。イラストレーターとして仕事をしていく以上、そういう面での考え方を変えた。



お会いするのはこの日で2度目。一つ年下の私にすごく気さくに話しかけてくれたり、関西弁がとってもチャーミングなナツキさん。彼女の繊細でかわいい、女の子が見てときめくようなイラストにもっともっとたくさんの人が魅了されることを願って。



a m 3

わたしの生きたい世界で生きたっていいじゃない

0コメント

  • 1000 / 1000